アノトは1999年、現ルンド大学の名誉博士である創業者が30代の若さで数人の仲間と共に立ち上げた企業です。最初に開発したのは、図書館の資料を一部分だけすぐにコピーできるようにするためのペン型スキャナーでした。このペンには、翻訳機能も搭載されています。その後、このペンを使ってもっと何かできないかと思ったアノトは、紙上で位置認識が可能になれば、用途はさらに広がると考えました。位置認識は、科学の世界で長年研究されてきたにもかかわらず、なかなか実用化に至らなかった技術でした。
この夢の技術を実現に導いたのが、アノトの発想の転換でした。アノトは、ペンよりも紙に注目したのです。小さなドットで構成される特殊なパターンを普通の紙に印刷することで、紙上のどこに何を書いても、それが全パターンのどの位置にあるかを正確に特定できるようにしました。このドットパターンは、アノト機能の中核技術とも言えるものです。
デジタルペンには取り込んだパターンを読み込むカメラや、ペンの軌跡や書き順、スピード、筆圧などを瞬時に認識できるイメージプロセッサ、それらを記憶するメモリなどを搭載しました。パソコンや携帯に取り込む通信機能のインターフェースには、USBとBluetooth無線方式を採用。これらのツールを使用したアノト機能の用途は無限に広がります。
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デジタルペンで、専用紙に描いた絵。 描き心地はまったく普通のペンです。 |
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パソコンに取り込んだ画像。 線の色や太さも変えることができます。 |
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手書きの納品書も・・・ |
この通り、すぐにデジタル化できます。 |
このように画期的な技術を開発したアノトは、起業の翌年という早期の段階で日本に事業所を開設しました。その理由は、アジアにおける重要市場であることももちろんですが、手書きの文化が深く根付いている日本なら、アノト技術への関心も高いだろうと考えたためです。
アノト機能を紹介された日本企業は、一様にその革新的な技術に感嘆の声を上げました。しかし、ビジネス展開の段階になると、紙、ペン、システムといったクロスインダストリー的な事業となるため、即製品化というわけにはいきません。また、ユーザーの要求が非常に厳しい日本では、製品の完成度を十分に高める必要があります。それでも、この4年間に日本でのパートナー企業は着実に増加していき、日立製作所、マクセル、大日本印刷、コクヨ、NTTコムウェアなどのキーパートナーとなる大手企業を10数社得るまでになりました。さらに、アノト機能の推進と標準化を目的としたコンソーシアムも結成され、本格的な市場投入へと着実に歩を進めてきました。
アノト日本、社長の山中照雄さんは、日本におけるビジネスに関し、次のようにコメントしています。
「新しい技術が日本で根付くには、少なくとも5年かかります。今年で4年目となるアノト日本のビジネスは、今年から来年にかけて本格的に離陸することになるでしょう。100以上のプロジェクトが動き始めますよ」
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アノト日本スタッフの柳田さん(左)と朝岡さん(右) |
日本におけるビジネス展開の手始めとして、アノトが注目したのは教育分野。高い信頼性が要求される市場です。アノト日本は2004年4月より、大日本印刷、マクセル、ワオ・コーポレーションと共同でアノト方式デジタルペンと専用紙を用い、テストの採点をスピードアップする教育支援サービスを開始しました(詳細)。同分野でまず実績を築いてから医療、物流などのビジネス分野を中心に製品・サービスを展開し、最終的には最大の狙いであるコンシューマー分野へと普及させていく計画です。
4年の歳月を経て、ようやく日本でコマーシャルサービス化されるアノト技術。その先には、もっと大きな夢があります。
「無味乾燥な活字では伝わらない、豊かな感情や思い入れを伝えていきたいですね。これらは、人間が存在する限り必ず残っていくものですから。将来は、だれもがポケットにアノト方式のデジタルペンをしのばせ、それとは意識せずに使う日が来るといいですね。意外とそれは早く実現するかもしれません」と、山中さん。
最先端の技術を結集したアノトのデジタルペンが描く未来には、昔からずっと変わることのない、人間らしいコミュニケーションがあるようです。

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