FHU(持続可能な発展に向けたフォーラム)は「建築と暮らし」「エネルギー」「食品」「住環境と健康」「輸送」「観光」の6分野に焦点を当て、持続可能な発展と環境に配慮したビジネス開発の実現を目指しています。FHUの活動のうち、「建築と暮らし」に相当するものがウメオ市郊外のニィダラ湖畔に建設されている循環型住宅のテストハウス、「ニィダラ・コンセプト」です。FHUのプロジェクトリーダー、イェンジン・フォルクハーゲ氏は、「ニィダラ・コンセプトでは持続可能な方法で家を建て、生活する。これらのテストハウスは、FHUが世界に向けて提案したい建築の姿なのです」と語っています。
起業家を組織してネットワーク化

グリーンゾーンにあるフォードのショールーム |
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フォルクハーゲ氏によると、FHUの役割は「環境対策や地域の発展に役立つ良いアイデアを持つ数多くの起業家を組織し、ネットワーク化すること」。ニィダラ・コンセプトの発端は、ウメオ近郊のゴルフ場を手がけた建設会社、NYABが隣接地に循環型住宅を建設するという構想を持っていたことでした。これを知ったFHUが、「グリーンゾーン」(自動車メーカーのフォード、ガソリンスタンドのスタットオイル、ファーストフードのマクドナルドの3社が協力してウメオ市に構築した循環型社会区域)を手がけた建築家、アンデシュ・ニークイスト氏をNYABに紹介し、実現する運びとなったのです。

ニュールンダにあるニークイスト氏の事務所も循環型 |
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ニークイスト氏は、自身の建築事務所「Anders Nyquist AB」を通じて2社の大手日本企業とも協業しています。「現在、暑くて湿気の多い気候にも対応できるまったく新しい建築システムを開発しています。年内にもテスト住宅がスウェーデンで建設される予定です」。成功すれば、協業を希望する日本企業がさらに増加することでしょう。
すべてを再利用する循環型住宅

ニィダラ・コンセプトによって建設される32戸の集合住宅 |
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ニィダラ・コンセプトではニークイスト氏の設計により、第一段階として32戸の集合住宅が着工されました。プロジェクト全体では、集合住宅・一戸建て住宅を合わせて400戸前後が予定されています。住宅は太陽光エネルギーを最大限に利用するため、外装は暗色。太陽光が不足する冬場は木質ペレットでエネルギーを補います。資材には再利用が可能な木(無垢材や集成材)とセルロース断熱材を使用。家の寿命が尽きて解体されるとき、木であればそれ自体の再利用が難しくても、焼却することでエネルギーに変えることができます。
家の土台は耐久性に優れ、湿気にも強いフォームグラス(ガラス微粉末とカーボンを混ぜて作る資材)を採用。取り扱いも簡単で、一戸建て住宅の基礎工事なら4時間程度で終了します。もちろん、再利用可能です。住宅から出る生ゴミなどの分解可能な廃棄物は撹拌器で無害化され、良質な肥料として再利用されています。また、複数の機能を持つ新しい建築資材の研究も進めています。たとえば、屋根の内側に木質繊維ボードを使用すれば、断熱と同時に防音効果もある構造用部材となります。さらに、真の循環型社会という観点から、建築資材のほとんどを周辺地域にある製材所から調達しています。
他国に先駆けて化石燃料から脱却
スウェーデンは他国に先駆けて、新たに原子力発電所を設置することなく、化石燃料への依存から脱却すると宣言しました。期限は2020年。スウェーデン政府は、気候の変化が経済にダメージを与える前に、供給不足によって石油の価格がつり上がる前に、再生可能な燃料へ全面的に切り替えるとの意向を示しています。スウェーデンでは、あらゆる産業、学術組織と政府が連携し、この目標達成に向けて実際に動き出しています。
FHUが提唱する循環型社会は、まさにこの目標達成の核心を担うもの。FHUのプロジェクトは2006年の夏に終了しますが、プロジェクト終了後はEUの支援なしで継続し、地域に根ざした活動として発展させていく計画です。 

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