スウェーデン北部のルレオに拠点を置くスノーパワーは、ABI(Aurorum Business Incubator/オーロラ・ビジネス・インキュベーター)から助成を受け、2006年に設立されました。雪を利用した冷却技術に特化した事業を展開している企業です。ABIはルレオ工科大学、ルレオコミュニティ評議会などで構成される組織で、起業家が新たな事業を起こす助成を行っています。
スノーパワーの共同創設者であるシェル・スコグスベリ博士は、雪冷却技術の環境への貢献に関し、次のように述べています。「従来のエアコンなどによる冷却機を雪冷却に替えると、電力消費量の90%〜95%を減らすことができます」
“雪を利用する”ということは、食物を保存するために使うなど、古来より人類に備わった知恵でした。それがスノーパワーの長年の研究により、暖かい季節でも雪を保存して、冷房や食物貯蔵に利用できる技術へと進化したのです。
ウッドチップに覆われた雪の貯蔵室 |
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雪冷却技術で最も重要な施設が、地下や池の中に設置される雪の貯蔵室です。ウッドチップやプラスチックシート、砂、岩などを断熱材として利用して、貯蔵室を低温に保ち、暖かい季節でも雪を保存することができます。ただし、気候条件や気候状況、貯蔵室の大きさ、断熱材の種類などにより、貯蔵している雪は初めの体積量に比べ、年間で10%〜35%の量が溶けてなくなります。
この貯蔵室から冷却する場所まで、パイプを通して雪解け水を送るというのが、シンプルでありながらコストや化石燃料の利用を抑えられるスノーパワーのシステムです。貯蔵室は都会でも簡単に建設することができます。
雪冷却技術を使った代替冷却法は、環境だけではなくコストにおいても、大きなメリットがあると、スコグスベリ氏は述べています。「雪による冷却技術は、使用する電力量を低く抑えられるため、電気料金の変動の影響をあまり受けません。ですから、顧客とは一定した料金で長期間の契約を結ぶことができます。雪冷却に替えれば、冷蔵庫の電力消費量は、約50%削減することができます」またその他のメリットとして、音がほとんど出ないことも挙げています。
この雪の冷却技術を導入している施設のひとつが、スウェーデン、スンズバルにある病院です。2000年から冷房と冷蔵に利用していて、非常に高い評価を得ています。今後さらに顧客を開拓するにあたり、オフィスビルやショッピングセンター、製紙工場、コンピュータ部品工場などをターゲットとして考えているとスコグスベリ氏は述べています。
また今後のビジネスの展開について、次のように話しています。「当社の技術を広めるために、現在はスウェーデンの各地で精力的に活動しています。私たちは当社をエネルギー会社と考えていますが、貯蔵室の建設や販売に興味がある業者には、専門技術や知識の提供も行っています。今後は国際的な事業展開の可能性も検討していて、当社の技術を利用できる地理的条件と気候を備えた地域の評価を進めています。日本に関してはまだ詳しい調査は行っていませんが、北海道をはじめとする一部の地域には降雪量が多いことから、とても興味を持っています」
日本でも雪を利用した冷房や冷蔵のシステムを見られる日が、近いかもしれません。
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