-スウェーデンへの投資に至った経緯を教えてください
ジャニーズにはアーティストはいますが、楽曲は外部から調達しなければなりません。そこで5年ほど前に、フランスのカンヌで毎年開かれるMIDEMという音楽の展示会に「We
Buy Songs」という看板を掲げ、ジャニーズ出版とスマイル音楽出版とで初めて共同出展しました。その際にABBAの影響もあり、もともと興味のあったスウェーデンのブースに行って、片っ端から試聴したんです。するとこれが、すごくいいんですよ。他の国と比較しても際立っていましたね。今回投資をした「リアクティブ・ソングス・
インターナショナル(RSI)」の名前を知ったのはその時です。昨年、同社が国外でビジネスパートナーを探しているという話を聞き付け、迷わず手を挙げました。
-スウェーデンから楽曲の提供を受けるメリットは?
音楽業界をグローバルな視点で見ると、スウェーデンは世界第3位の音楽輸出大国です。ちなみに、1位はアメリカで2位はイギリスです。この中でスウェーデンは他の2国と比べ、著作権に対して非常にフレキシブルな考えを持っています。著作権のルールは世界共通ですが、運用の文化は世界各国でまちまちで、米英では著作権の運用に関し、独自の非常に厳しい基準を持っています。例えば、日本ではドラマの主題歌やCMを通したプロモーションが一般的ですが、米英ではこのような商習慣はないため、なかなか受け入れてもらえません。このような習慣や文化がないことはスウェーデンも同じですが、トータルでこれくらいの収益が見込めるという説明をするとスウェーデン人は納得し、柔軟に対応してくれます。「This
is MINE」というよりも「We can SHARE」という印象を受けます。このためか、制作におけるコラボレーションも得意で、仕事がやりやすいですね。
-国内にも作曲家は大勢いると思いますが、なぜあえて海外から楽曲の調達を?
第一に、原盤制作コスト(スタジオ代、アレンジ料、演奏料等)の問題があります。スウェーデンでの音楽制作コストはトータルで日本の2〜3割程度安く済みます。今回のRSIへの投資のイニシアルコストは7000万円で、年間の運営費は1億円程度です。RSIには10人のクリエーターがいて、年間数十曲の楽曲の提供を受けますが、日本で同じくらいの数の楽曲を調達しようとすると、倍のコストがかかるでしょうね。もちろん、安さだけではなく、作曲家、編曲家達のクオリティの高さも申し分ありません。音楽制作においてスウェーデンには「速い、安い、うまい」が揃っています。ただ、当たり前ですが、詞だけは日本で作らなければいけません。RSIは、音楽の「パーツ」を輸入するジャニーズのスウェーデン工場、といったところでしょうか。
-2003年5月に投資をされてから、すでに良い結果を得ているようですね。
はい。RSIの作曲家による曲を採用したKinKi Kidsの「薄荷キャンディー」がオリコンで1位を取りました。また、わたしが別で運営している音楽プロダクション、スマイルカンパニー所属の玉置成実が歌う「Shining
Star ☆忘れないから☆」もRSIの作曲によるものですが、こちらもオリコン初登場で9位になりました。RSIのクリエーターたちもこれらの成果を大変喜んでいます。人口の少ないスウェーデンでは3万枚売れればゴールドディスクですから、日本のヒットはスウェーデンの大ヒットになるんですよ。これからも、日本の音楽業界のニーズに合うかを見ながらどんどんRSIの曲を投入していきたいと思っています。
-日本の音楽業界に与える影響も大きいのでは?
ジャニーズがスウェーデンの会社に投資をして何かを始めるということに、日本の音楽業界はすごく興味を持っています。また、日本の作曲家もスウェーデンの楽曲の流入によってインスパイアされているようです。残念ながら日本の音楽は東南アジアの一部を除き、世界ではまったく注目されていませんが、スウェーデンの音楽は違います。実際、今年1月に開催されたMIDEMで「Sweden
+Japan=Unique」という看板を掲げてプロモーションしたところ、大きな反響があり、欧米の制作プロダクションや音楽出版社がこぞって聴きにきました。日本のクリエーターが単独で世界に出て行くことは難しいですが、コラボレーションの上手なスウェーデン人と組めば、世界で認められる可能性も充分あるわけです。
-目指すは世界ですか?
いや、そこまではまったく考えていません(笑)。今回の投資の目的は、あくまでも日本の音楽市場に向けた楽曲のパーツの輸入です。しかし、人間には「楽しみ」というものがなくてはいけません。今回の投資が本当に成功するか否かは後3〜5年しないと分かりませんが、失敗したからといって一家離散ということはありません。余力のあるところで行った投資ですでにヒットも出していますし、世界進出の夢まで見られる。わたしたちにとって、今回の投資によるマイナスはひとつもありません。
-今後、RSIとはどのようにコラボレーションしていくのですか?
これまでは、RSIが制作した楽曲のストックの中から日本に合いそうなものをピックアップしてきましたが、これからはこちらからこういったイメージの曲に、このようなアレンジをしてくださいというように、制作をすべて任せることもあるでしょう。スウェーデン人パートナー達には、RSIの売り上げの50%は日本で達成可能だろう、と言ってあります。日本は音楽のマーケットとしては世界第2位の輸入大国ですからね。現在、RSIのアーティスト(歌手)部門はプロモーションコストの関係で凍結していますが、日本からの収益が安定し、欧米での著作権収益が増えた時点で復活させ、世界を目指して彼らなりの夢を実現していけばいい。幸運なことに、世界第2位の市場である日本に拠点を置くわたしたちは、世界に出て行かなくても十分経済的に潤います。しかし、世界で実積を築いてきたスウェーデン人が、世界で勝たなかったらどうするんですか。たまたまパートナーとなった会社が世界で成功してくれれば、良き理解者としてこれほどうれしいことはありません。

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