糖尿病の中でも、発病時からインスリン注射を必要とするI型糖尿病患者は、朝昼晩と血糖値を測定して食事やインスリンの量をコントロールしなければなりません。まさに、毎日が治療です。 「病院で血糖値の検査をしてもらうと、毎日、朝昼晩と通院しなければならないことになります。これは実際、不可能なことです。Xメーターを使用すれば、患者さんは自宅にいながら簡単に血糖測定をすることができるのです」と、アークレイ株式会社 取締役 業務責任者の野々垣正義さん。
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小型血糖測定機「Xメーター」
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Xメーターの検査方法はとても簡単です。指先を少し針で突いて血液を出し、Xメーターに差し込んだクリップ大のセンサーに血液を吸引するだけで測定を行う事が出来ます。必要な血液量はわずか0.3µl。たった5秒で結果が得られます。
新製品であるXメーターの目標は、患者さんの負担を可能な限り低減すること、と野々垣さん。「毎日指先から血を採ることは、患者さんにとって物理的にも精神的にも大きな負担になります。私どもはいかに少ない血液量で、いかに痛みを少なくし、いかに速く測定できるかに挑戦してきました。また、Xメーターはそういった最高の性能を有するだけでなく、人前に出しても気にならないようにデザインにも配慮しています」
アークレイは新製品であるXメーターを、まずスウェーデンでマーケティング活動と共に販売していくことを決定しました。対象国はスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの北欧諸国にエストニア、ラトビアを加えた計6カ国です。スウェーデンにマーケティングオフィスを設置した経緯を、事業サポート室 経営管理チームの下村啓介さんは、次のように語っています。
「当社はすでに、オランダに欧州のマーケティング拠点を設置していますが、Xメーターに関しては、糖尿病の患者数も多く意識の高い北欧で、市場に入り込んだ活動を行っていく方針を固めました。北欧の中でもスウェーデンを選んだのは、最も市場が大きく、糖尿病に対する医療従事者の意識が高いこと、地理的にも他地域へアクセスしやすいなどのメリットがあったためです。北欧でのアークレイ製品の販売は、フィンランドに本社を置く医療機器のディストリビューター、Tamro(タムロ)社がすでに手がけていますが、新製品の投入をきっかけにマーケティング活動を通じて同社の販売活動も支援していきたいと考えています」
オフィス立ち上げに際しては、スウェーデン大使館投資部(ISA東京)がオフィスの設置場所や住居の選定、通訳を兼ねたアシスタントの紹介などを通じてお手伝いをさせていただきました。ISAの支援にはとても感謝していると、野々垣さん。「アメリカや英国などと比較すると、進出している日本企業が少なく、情報も入手しにくいスウェーデンで、ISAの存在はとても助かりました。2004年10月にISA東京を訪問して相談に乗っていただいてから、立ち上げまで親切に、しかも無償で支援していただきました。ISAの支援がなかったら、3〜4カ月というスピードでオフィスを開設することはできなかったでしょう」
2005年1月にスタートを切ったスウェーデンのマーケティングオフィスは、ゼネラルマネージャーの佐藤弘光さんと、アシスタントの2名で運営しています。佐藤さんは現在、販社であるタムロ社のバックアップに注力しています。「糖尿病の治療では、血糖の測定値に誤りがあると即事故につながります。学術的な情報を十分に販社に提供し、トラブルを最低限に抑える努力が何よりも大切なのです」
Xメーターは2005年4月にスウェーデンで発売されましたが、スウェーデンでは地域ごとに保険の認可を受ける必要があり、現在同製品が採用されているのは2地域のみです。今後、順次他の地域でも認可を取得していく計画です。佐藤さんは、スウェーデンの医療機器ビジネスを次のようにみています。「スウェーデンは白黒はっきりしていますね。政治的な根回しなどは必要なく、物事の本質や真偽で判断する気風があります。その分規制も厳しく、参入するのは大変ですが、良い製品を持って道理を通せば成功できると思います」
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欧州糖尿病学会に出展し
注目を集めたXメーター |
規制の高い壁により、日本のように巷に製品があふれていないスウェーデンでは、一度壁を突破すればある程度の市場は確保できます。しかし、それで安心していてはいけない、と佐藤さん。「医療機器ですから、品質が良いのは当たり前。実際に患者さんに使っていただくためには、親しみを持っていただくことが必要です」。このため、北欧諸国にある糖尿病の患者会が発行する機関誌に広告を出稿したり、既存顧客にDMを出したりといった啓発活動を徐々に行っていく予定です。
さらに、佐藤さんにはその先の夢があります。「糖尿病は、多くの方が認識しているよりも深刻な病です。合併症を引き起こし、網膜症で失明したり、感染症や動脈硬化で足を切断したりすることもあります。しかも、一度かかったら治りません。糖尿病患者ではない人たちにも、日頃から予防の意識を持って血糖値を測定してもらえるといいですね。万歩計や体重計のように、血糖値測定機も一家に一台置いてもらうことが理想です」
新たな試みの場として、スウェーデンを選んだアークレイ。野々垣さんは、会社全体として同プロジェクトにかける期待を語ってくれました。「これまで、欧州では大規模な販社に頼ってきましたが、それだけでは世界に進出していくためには不十分です。今後はマーケティング活動をしっかり行って販社をバックアップし、確実に市場に入り込んで行きたいと考えています。それによって良い医療品を安価で提供することが可能になり、世界中の人々の健康な生活に貢献するという当社の理念に合致した活動となるのです。その足がかりとして、価値観の合うスウェーデンは最適な国と言えるでしょう」
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