―SPリサーチとの共同研究が始まったきっかけを教えてください。
 2007年3月にスウェーデンの代表団が来日し、横浜みなとみらいの住友林業展示場前で記念撮影 |
2006年4月にヴェステルボッテン県知事を団長とするスウェーデンの視察団が日本を訪れた際に、木造住宅No.1の住友林業を訪問しようという話になったそうです。そこで、スウェーデン大使館投資部(ISA東京)から紹介を受け、私がBF構法のプレゼンテーションを行いました。彼らはこの構法のことをそれまで全く知らなかったようですが、プレゼンを聞いた後に「開発フィロソフィーにも共感できるし、技術レベルがかなり高い。まさにこういうものを探していた」と。ある意味、偶然の出会いですね(笑)。
―BF構法とは?
住友林業が2001年より明治大学と共同で研究開発を始め、2005年に都市型3階建フラッグシップモデルとして発売を開始した全く新しい構法です。木造による純粋なラーメン構造で、高い空間自由度と構造安全性を両立しています。この構法は世界的にも高い評価を得ており、実はスウェーデン視察団へのプレゼンの1週間ほど前に、私はウィーン工科大学に招かれて同様の講義を終えて帰ってきたばかりだったのです。
―なぜ、スウェーデンの視察団はBF構法に興味を持ったのでしょう?
スウェーデンは当時、行政主導で4階、5階建ての木造アパートを建てようと計画していました。従来はコンクリートやレンガで建てていましたが、地球環境への配慮から今後は木造も採用したいと考えていたようです。しかし、欧州でよくある大きなパネル式の木材を使用する構法では、構造的に必要な壁が多くなるため、間取りの変更ができません。改装を繰り返しながら長く住み続けるという欧州の建築文化にはそぐわない面もあります。BF構法は丈夫な柱と梁で構築される構造(ラーメン構造)のため、空間のフレキシビリティが非常に高い。まさに彼らが探し求めていた構法だったのでしょう。
―住友林業にとっての共同研究のメリットは?
住友林業は90年代初頭より、スウェーデンからの木材輸入分野では日本の商社の中でリーディングカンパニーでした。それが今回、建築分野で共同研究を開始する意味は大きく分けて3つあります。ひとつめは技術の輸出を目的とした先行投資です。4階、5階建てのハイスペックな木造建築技術をまずスウェーデンで確立し、欧州の他国においても広く技術供与していきたい。2つ目は北欧の進んだ意匠デザインや、断熱および床遮音のノウハウなどを知ること。つまり技術の輸入です。そして3つ目はブランド力の強化です。住宅産業は非常にドメスティックな産業で、住宅メーカーが海外に進出することは稀です。住友林業がこのように高度な建築技術を持っているということは、海外ではほとんど知られていません。技術提供というビジネスモデルは、企業PRとしても大きな意味があるのです。
―共同開発のスタートに当たっては、ISAもお手伝いしました。
ISAのサポートは非常に手厚かったと感じています。プロジェクトが成立する前の段階では、スウェーデンサイドの代表者であるヨハンソン教授との仲介役として通訳から同意書、契約書の作成といった細かなところまでお手伝いいただきました。また、事前に現地の研究関連施設を視察した際にもずっとアテンドしてくれました。赴任に当たっては居住許可証、就労許可証の申請などもフォローしていただきました。住友林業がスウェーデンに駐在員を派遣するのは初めてのことでしたし、私自身も不安を感じていました。そういった意味で、自身も海外赴任経験者であるISAの方々は、特に家族に関する私の心配を察してくれ、精神面でも大いに助けられました。
―赴任して約1カ月半が経過しましたが、スウェーデンでの仕事はいかがですか?

お昼のひととき。ウッドテラスでハンバーガーを作っています |
スウェーデンの仕事場は大人の世界ですね(笑)。皆自分の役割をよく理解し、自らの裁量で仕事を進めていきます。もちろん、プロジェクトの目標やスケジュールは決めますが、日本でいう上司や管理者といった存在はなく、定例会議やワーキングといったものもありません。ただ、ディスカッションは個々のレベルで頻繁に行います。同僚は皆プロフェッショナルで自立しており、信頼関係も築きやすいと思います。
―最後に今後の抱負を聞かせてください。
プロジェクトに関する短期的な目標は、スウェーデンの方々にBF構法とその技術ノウハウを深く理解していただくことです。そのうえで、将来的にはスウェーデンもしくは欧州全体にフィットしたやり方でさらに発展させ、それを日本にフィードバックしていきたいと考えています。このプロジェクトを成功に導くことが、お世話になったISAの方々、スウェーデンの関係者の方々、チャンスをくれた住友林業への一番の恩返しになると思っています。
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