日本企業に最近増えてきているのが、国外の顧客の近くにR&Dサポートオフィスを設けるケースです。日本国内では昔から行われてきた戦略ですが、これを外国で実施するのは新しい発想だと言えます。
スウェーデンの場合では、例えば自動車業界と取引のある日本企業の大多数は、ボルボとサーブの両社が大規模な製造工場を構えるイェーテボリ/トロルハッタン地域にサポートオフィスを開設しています。
スウェーデンのもう1つの中核産業である通信業を見てみると、エリクソンやソニー・エリクソンなどの会社と取引のある日本のサプライヤーは、それぞれストックホルムとルンドにサポートオフィスを設けています。
「競争の激しい現在のビジネス環境においては、顧客ニーズに対する臨機応変な対応がサプライヤーに求められます。したがって、大型顧客の近接地にR&Dサポートオフィスを設けることは非常に理にかなったことなのです」。こう話すのは、ISA東京代表のハンス・ロディーネル。「近年ますます多くの日本企業がスウェーデンを欧州北部の事業拠点の最適地としていることを喜ばしいことと考えています。スウェーデン自体には900万の人口しかいませんが、ストックホルムから飛行機で1時間前後の範囲には1億人以上が暮らしているのです」。
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ISA東京代表
ハンス・ロディーネル |
スウェーデンのもう1つの魅力は、経済的にも政治的にも安定した国であるということです。また、大学の近隣にいわゆる「クラスター」が広くつくられているのもスウェーデンの魅力として挙げられるでしょう。1980年代にルンドにつくられたイデオン・サイエンスパークを先駆けとするこれらのサイエンスパークは、ビジネスチャンスとともに、高度な技術と知識を備えた人材を提供しています。
この15年間で、スウェーデンに拠点を置く日本企業の数は3倍以上に増え、現在は168社となっています。数だけでは英国やドイツ、オランダに比べると少ないかもしれませんが、日本企業の増加率で見るとスウェーデンは他の欧州諸国よりもかなり高くなっています。近年の日本企業のスウェーデンへの流れは第2の波だと、ISA東京の常任顧問、森道郎は語ります。
「1980年代から1990年代にかけて、自動車業界と取引のあるデンソー、アルプス、アルパイン、矢崎総業、アイシンAW、サンデンなどがスウェーデンの中核都市に相次いでR&Dサポートオフィスを開設しました。これと同じような動きが現在は通信産業に起きており、ポリマテック、コーセル、日本写真印刷といった企業がスウェーデンに参入しています」。
携帯電話のキーパネルなどを製造しているポリマテックは2006年にルンドにR&Dサポートオフィスを開設しました。そのオフィスは、同社の最も重要な顧客の1つであるソニー・エリクソンのほぼ徒歩圏内にあります。エリクソン向けに精密機械を製造しているセイコーインスツルは、2000年にストックホルム郊外のソレンチューナにオフィスを開き、エリクソンの近接地での業務を実現しました。また、カーナビやカーオーディオを製造しているアルパインも、スウェーデンにオフィスを開設しています。EU統括拠点をドイツに置く同社ですが、スウェーデン市場に拠点を持つことにもメリットがあると考え、2004年にイェーテボリにオフィスを開設しました。
「大規模な新規開設の一つとして、デンソーがありますが、同社のスウェーデンオフィスでは45人の従業員が働いています」と森は言います。「また、別の成功事例として矢崎総業を挙げられます。自動車のワイヤーハーネスを製造する同社は、実質上ボルボの隣接地であるイェーテボリのヒシングス・バッカに拠点を置き、40人を雇用しています」。
これまで日本の対スウェーデン投資を最も多く獲得するのは自動車業界だと見られてきましたが、ロディーネルも森も、成長が著しく非常に有望な分野として通信産業に注目しています。
ロディーネルは次のように語っています。「日本企業は、自分たちで取引を生み出していくためには製造の早い段階で存在を示す必要があると気づき始めていると思います。早くから関わりを持つことにより、クライアントが何を必要としているかを素早く察知し、自社製品に反映させることができるからです」。


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