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ハンティングが行われるスウェーデンの森
© Roine Magnusson |
9月と10月の霧の立ちこめる朝、ハンターたちは銃と犬を携えて、スウェーデン国内に散在する狩猟小屋に集まります。ビジネスの世界と同様に、狩猟の世界でも新参者は下積みを数年間は行う覚悟が必要です。下積みの間は、ほかのメンバーが敬遠しがちな見晴らし場所を狩猟の場にあてがわれたり、狩猟の場にいるかどうか分からない鹿を集めるために、偵察に行かされたりすることもあります。そんなことをしてまで…と思う人もいるかもしれません。しかし、スウェーデンで森の王と呼ばれるエルク(ヘラジカ)に出会うチャンスはまれでも、ハンター仲間たちと会話を交わすことで、ビジネスが上手くいくチャンスは多いにあるのです。そのため、一流の狩猟会に招待してもらうために、大金を支払う人もたくさんいます。ハンターにとっての最高の名誉はスウェーデン国王からの招待です。ハンティング愛好家である国王は、1年のうち数週間を王室の狩猟場で過ごしますが、ここに招待されるのは、特別なコネクションを持つ人に限られるからです。
スウェーデン狩猟者連盟によると、ハンターの数は近年増加を続けていて、同連盟が今年集計した会員数は2万人近くで、スウェーデン総人口の2.5%となっています。特筆すべきなのは、女性の会員が過去10年間で50%も増加していること。現在は全会員数の6.5%を女性が占めており、過去最高の割合になっています。この状況について、週1度は夫とハンティングに出かけるというある若い女性は、次のように話しています。「昔はハンティングと言えば男性がするものだったけど、最近は私の女友達にも狩猟免許をとった人はたくさんいるわ。以前よりハンティング界が女性を受け入れるようになってきていると思います」。
ハンティング界には厳密な階級制度があり、常にベストポジションをもらえる人、ほかの人のために獲物を集める人などの役割を与えられますが、どんなに形式張った狩猟会でも、リラックスしたムードが漂っています。現実社会でどれほど成功していようとも、ひとたび森の中に入れば、人はリラックスするものなのでしょう。そして、人間と動物が対峙する局面になったとき、男性も女性も一致団結し、純粋にこの経験を楽しみます。新鮮な空気、適度な運動、そして緊張と興奮。これらが生きている実感を与えてくれるのです。狩りの1日が終わり、狩猟小屋に戻って暖炉の火を囲んでくつろぐ時間も欠かせません。ハンターたちが逃した獲物について武勇伝を語り合うのはこの時間なのです。
鹿狩りの季節はハンティング好きにとって、間違いなく1年で最も心が踊る時期でしょう。スウェーデン北部では、社長と大多数の従業員がハンティングに出てしまうため、この時期の数週間は、業務がほとんど停止してしまう会社さえいくつかあるようです。しかし、霧の立つ朝、深い森のどこかで、コーヒーの湯気越しに交わされるビジネスの糸口となる会話が、そんな業務の損失も補ってくれることでしょう 。


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