スウェーデンでは2020年までに全エネルギーの49%をバイオマス、水力、風力、太陽光、地熱と言った再生可能なエネルギー(Renewable Energy)で賄うという大方針を打ち立てています。ちなみに現時点は35%ですでに世界トップクラスですが、さらに49%まで推し進める構えです。その具体的な取り組みがクリーンテックプロジェクトなのです。
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ISA東京 常任顧問 森道郎 |
私たちはこうした取り組みを自ら示していくことで、環境に対する意識が世界中に広まることを望んでいます。ただ、先進国の産業界の中には「CO2削減の取り組みは経済の活性化を停滞させる」と懸念してネガティブにとらえられることがあるのも事実です。しかし、環境問題に積極的に取り組んできたスウェーデンでは、過去15年間でCO2を10%減らしながらGDPを40%も上げることに成功しています。
余談ですが、スウェーデンでは電力会社に対する義務として「エネルギー総需要の16%以上を再生可能なエネルギーにしなくてはならない」という法律があります。これは2012年には18%になる予定です。こうしたことからも、決して環境問題と経済活性化は両立できないことではないと確信しています。
クリーンテックプロジェクトでは9つのプライオリティーエリアを設定しています。その中でも特に力を注いでいくのが、(1)バイオマス発電(Biomass Power Generation)、(2)バイオマス燃料(Biomass Fuel)、(3)風力発電(Wind Power Generation)、(4)地中熱ヒートポンプ(Geothermal Heat Pumps)の4分野です。
バイオマス発電の例としては、木材の粉から再生されたペレットの利用があります。スウェーデンのペレット生産量は世界でもトップクラスですが、これを家庭用のストーブに使ったり、火力発電でこれまでの石炭に交ぜて使ったりします。そうすると火力はこれまでと同等ながら炭酸ガスの排出量が大幅に削減できるのです。
バイオマス燃料とは、エタノールやジメチルエーテル(DME)などをエネルギーとしたものです。また浄水場で汚水(下水)からメタンを発生させ、これをガスとして使用しています。スウェーデン国内では、エタノールをガソリンに85%まで混入したE85が急速に普及していますし、すでにバイオガスによって走るバスもあります。
そして、新たなバイオマス燃料として注目しているのが「ブラックリカー」です。これはパルプの精製過程で生成される液体で、これまでは製紙工場などで焼却処分していたものです。スウェーデンでは、ブラックリカーからエタノールを抽出する技術の開発に成功したことで、新たなエネルギー源としての採用に取り組んでいます。世界では、エタノールはサトウキビやトウモロコシから作られることが多いようですが、スウェーデンではこれを敬遠し、セルロースベースに徹底しています。
バイオマス発電、バイオマス燃料に続いて、スウェーデンが力を入れているのが風力発電です。電力連合会は、風力発電により蓄積されたエネルギーで走る車の普及を「Driven by the Wind」というキャッチフレーズで推進しています。また国は「グリーンカーリベート」という制度を2006年4月より期間限定で実施しました。これは個人が政府の指定したグリーンカー、つまりハイブリッド車、電気自動車、低燃費車等を購入する場合には1万クローネ(約15万円)の補助が出るというものです。これによってグリーンカーの普及率は30%にまで上がりました。
そして4つ目が地中熱ヒートポンプです。地下50mの穴を掘り、常に15度に安定した地熱を利用することで冷暖房の代替とするのです。私たちは地中熱ヒートポンプの採用を、地球にあるエネルギーの有効利用と考えています。
主に力点を置いているのは以上の4分野ですが、そのほかにも、太陽光発電(Solar Power Generation)、波の力を使った波力発電(Wave Power Generation)、コジェネレーション用の燃料電池(Fuel Cells)なども研究を進めています。また環境共生型建築/パッシブハウス(Sustainable Building/Passive House)、冷暖房・換気・設備(HVAC Technologies & Equipment)なども世界に先駆けて取り組んでいる分野です。
そしてこれら多くの取り組みを総合的に網羅したプロジェクトとして、総合環境都市開発を進めています。共生(Symbiosis)をキーワードにシンビオシティ(Symbio City)と名付けた街づくり計画です。スウェーデン内では数百社の企業がかかわり、すでにストックホルム郊外をはじめとして数市でスタートしています。こうした取り組みは、例えば日本の企業と連携することで、中国を中心とするアジアに再輸出するプロジェクト化も可能であると考えています。日本の企業や自治体から問い合わせや視察の申し込みなどもいただいておりますので、今後はさらに注目されていくと思われます。
環境関係では「Sustainable」という言葉がよく使われ、通常「持続可能な」と訳されますが、同時にこの言葉には「環境を破壊しない、環境に優しい」と言う意味もあります。環境に優しいからこそ、持続可能というこの言葉の意味をしっかりと受け止めて地球温暖化防止に少しでも貢献していきたい、それがISA東京の願いです。


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