自然界に存在するらせん構造から名前を取った、産官学連携の三重らせんモデルが、スカンジナビア諸国で大きな成功を収めています。
このモデルの基となっている考え方は、大学、産業界、政府のそれぞれが相乗効果を生むような方法で知識を集積することを目的に協力し合うというものです。
この三重らせんモデルを最も顕著に表しているのは、スウェーデン南部とコペンハーゲン地域にまたがるメディコンバレーでしょう。1983年にルンド大学から独立したイデオンサイエンスパークをスウェーデン側の中核とするこのメディコンバレーには、両国の公共および民間セクターから1万人もの生命科学研究者が集まっています。
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トゥルンクヴィスト氏著書
「最先端の科学」 |
メディコンバレーという名称は、有名なカリフォルニアのシリコンバレーにちなんだものです。メディコンバレーも、本家と同様の効果を生むのに十分な規模に達しており、その創造的な空気の中に拠点を置くだけでも得るものがあるように思われます。
ルンド大学の教授であるグンナル・トゥルンクヴィスト氏は著書「最先端の科学」の中で、「狭い海峡をまたぐ橋を建設するなど物理的な障壁を打破することで、地域全体に莫大なチャンスを生み出すことができる」と指摘しています。具体的には、「オーレスン地域は、デンマークのコペンハーゲンとスウェーデンのマルメを結ぶ橋でつながった、国境をまたぐエリアで、デンマークとスウェーデンをつなぐ情報通信網でもあり、革新的な地域でもあります」と述べています。
スウェーデンの国際競争力はトップレベル (世界経済フォーラム リスボン・レビューより)
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スウェーデンは欧州諸国の競争力を評価する世界経済フォーラムのリスボン・レビュー(2008)でトップの座を占めましたが、その主な要因はこの三重らせん手法だったと考えていいかもしれません。スウェーデンが高い評価を受けたのは、革新を生み出す高い能力、民間セクターが提供する潤沢な研究開発費、企業と学術機関との流動的な協力体制などの点だったからです。
また、特筆しなければならないのは、三重らせんモデルにはグローバル企業も、ノーベル賞を受賞した研究者も、一国の首相も、中央政府の働きも必要ないということです。それどころか、人口密度の低いスウェーデン中部のヴェルムランド県にちなんで名づけられたいわゆるヴェルムランドモデルが示すように、小企業と地方政府、高度な教育機関という環境でも、三重らせんモデルは十分に機能します。最も重要なのは、持続と成長が可能な何かを手元にある資源から創造しようという意志が、参加者の間にあるかどうかという点なのです。


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