「議長国は加盟国内で半年ごとの輪番となっており、前回スウェーデンが議長国となったのは2001年の春でした。今回の任期では、気候変動問題と金融危機に集中して取り組みました」
議長を務める国はEU内の政策作業を監督、調整する責任を負い、加盟国間の利害を調整する役割を果たします。またEUの法令や政策を世界の関係各国に確実に伝達することも議長国の責務です。
日本においては、スウェーデン大使であるノレーン氏が、代表団を率いて霞ヶ関や永田町を訪問し、ブリュッセルやストラスブールで下された決定事項や法令を日本政府の関係各所に伝達する必要がありました。これを実行するのがノレーン大使の役割なのです。
「EU諸国の駐日大使は月に一度全員が集まり、政策や調整事項を協議します。さらに各国の参事官や公使、その他の外交官も月に1回会合を開き専門分野に関して話し合います。ですので、大変忙しくなるときもあります」と大使は話します。
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ステファン・ノレーン駐日スウェーデン大使
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大使は10月、新たに就任した千葉恵子法務大臣を訪ね、同行したEU代表団とともに死刑制度について議論しました。EUは死刑制度に強く反対しており、日本政府と長期にわたってこの問題を議論しています。死刑廃止はEU加盟の前提条件にもなっているほどです。
「EUは、日本で死刑が執行されるたびに何かのアクションをとるわけではありませんが、新しい内閣が発足したり法務大臣が交代したときには表敬訪問をしてこの問題をお伝えすることにしています」。
加盟国が27カ国まで拡大したことで、EU内部では現在の議長国輪番制度の見直しを求める声が上がっています。まだ何も決定されていませんが、スウェーデンが次回いつEUの代表になるのかはわかりません。2020年代までその機会がないことも十分に考えられます。
「EU議長国の輪番制度と同様に、リーダーシップを国単位で持ち回る現在のやり方は、今後もしばらくは続くだろうと考えています。議長国の任務をこなすのには時間と努力が必要です。しかし、リスボン条約の発効にともなって、職務のいくつかは新しく選出されたEU大統領とEU外務・安全保障政策上級代表に引き継がれていくと思います」
EUは拡大を続けており、現在もクロアチア、マケドニア、トルコの3国が加盟候補国として加盟審査を受けています。
またアイスランドは、加盟を申し込んでいるものの、加盟候補国になっていません。もしEUにアイスランドが加盟することになれば、北欧諸国でEU未加盟の国はノルウェーのみとなります。
連携作業やグループ作りにあたっては、加盟国が多いほうがいいのは明らかです。EUの今後の発展について、大使は楽観的な意見を持っています。
「EUは2つの点で大きな成功を収めました。スウェーデンを含むいくつかの国はまだ参加していませんが、通貨ユーロの導入がそのひとつです。もうひとつは、多数の加盟国を得たことです。30年あまりの間に、加盟国は6カ国から27カ国に増えました。EUはヨーロッパの平和、自由、繁栄を維持するための最も重要な役割を果たしており、現在も拡大を続けています。現在、EUは政治的・経済的な一体化に向けて進んでいますが、近い将来、国民国家の連合についても話し合うことになるでしょう」
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