2000年8月に設立されたミクヴァックは、食品パッケージの開発、製造を行う企業で、本社はスウェーデン、イェーテボリ市にあります。その画期的なパッケージ技術は、実は別の発明の副産物として誕生しました。
ミクヴァックの創業者、ジョエル・ハーメル博士(Dr.Joel Haamer)が、1970年代にスウェーデンの西海岸で、真水によるムール貝の養殖方法に成功したとき、発明への第一歩が踏み出されました。博士はムール貝を腐らせずに、フランス、ベルギー、オランダといった主要な市場へ運送する方法を考案する必要に迫られたのです。すでに氷の上に貝を載せて運ぶ方法はありましたが、それとは別のさらに良い方法を生み出すことに挑戦しました。
ミクヴァックのCEO、ノーデルさんは、当時を振り返り、次のように話しています。「ハーメル博士は、長い時間をかけて開発に取り組み、ミクヴァックの包装技術である真空方法を発明しました。博士は傷みやすいムール貝を運べるのなら、どんな食品にもその真空包装を応用できることを思いつき、本格的に事業化するため、会社の設立を決意したのです」。ハーメル博士は、シャルマース工科大学関連の投資ファンドをはじめ、海外のいくつかのファンドからも出資を得て、ミクヴァックを創業。その年商は、2001年は300万スウェーデンクローナ(約5300万円)でしたが、2007年には3200万クローナ(約5億7000万円)と10倍以上になり、急成長を遂げています。 急成長の秘密は、独自性と将来性の高い2種類の包装技術にあります。ひとつは、ミクヴァックで最も大きな売り上げを占めるもので、調理済み食品が入った容器を真空に近い状態でパックし、30日間の冷蔵保存を可能にする技術。そしてもうひとつは、生の食品を包装するウィーゼルパックという技術です。このウィーゼルパックは海外からも大きな注目を集めており、フランスの大手ケータリング会社、ソデクソ(Sodexo)も関心を寄せています。いくつかある利点の中で、特に注目されているのが、生の食品に含まれる栄養素がほとんど損なわれずに残ることです。
ブルーのシールのように見えるバルブが特徴。調理済み食品を真空パックする際に開閉して、おいしさを残したまま食品を閉じ込める
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「今まで当社のターゲットは欧州と米国でしたが、最近になってインド、タイ、バーレーンのクライアント候補とも話し合いを進めています」とノーデルさん。飲料用紙パックの発明で世界のリーディングカンパニーとなったスウェーデン企業、テトラパックと自社を重ね合わせ、ノーデルさんは次のようにも話しています。「テトラパックと同じように、当社の強みも包装資材にあります。包装用機械を食品関連会社に無償で提供しても、容器の販売で充分な利益を得られる自信があります」
ミクヴァックはまだ日本市場には上陸していませんが、将来の進出を示唆する発言もありました。「日本では食の安全が非常に注目されており、当社の製品は日本の食品会社に大きく貢献できると確信しています」。最近日本のジャーナリストがミクヴァックへ取材に訪れ、その包装技術は日本のメディアでも詳しく報道されており、日本からも注目されています。
ところで、この技術はどんな食品にも応用できるのでしょうか。「魚や野菜には特に向いていますが、牛肉のような赤身の肉は調理時間が長くかかるため、もう少し開発に時間が必要なのが現状です。しかし、カレーなどの調理済み食品に関しては、ずば抜けた力を発揮します」とノーデルさん。「インドと英国では、持ち帰り用カレーに注目が集まっており、当社の技術はそのような調理済み食品の賞味期限を伸ばすのに、非常に有効であることが分かっています」
欧州における調理済み食品の需要はここ数年で急伸していて、確実にミクヴァックの追い風となっています。見た目が美しく、おいしく、栄養価も高いインスタント食品を提供できるミクヴァックの技術は、日本を含む世界の各地にビジネスを拡大していくことでしょう。
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