2006年9月に当選を果たした中道右派のフレドリック・ラインフェルト首相は、資産税の廃止に伴う予算を翌月に計上する計画です。若き指導者のもとで賛同を得たこの政策は、平等主義のスウェーデンにおいて、富を蓄えることがタブーではなくなったという力強いメッセージを打ち出したと、専門家は語っています。
資産税廃止以降は、1住居あたり4500クローナ(約7万9000円)または課税評価額の最大1パーセントの住民税に切り換えられます。集合住宅の場合、課税額は一戸あたり最大900クローナ(約1万6000円)となります。
与党である非社民連合4党からの官僚によって構成され、アンデシュ・ボリィ財務大臣が委員長を務める専門調査委員会は、過去数カ月にわたり、資産税廃止による影響を調査してきました。この計画が望ましくない効果を生んだ場合、専門調査委員会は代替案を試験的に実施する権限を持っています。ただし、すべての改正は住宅部門の予算の範囲内で行わなければなりません。
非社民連合4党は、昨夏の選挙期間中、アルメダレンで1週間にわたる会合を開いた際に資産税廃止計画を発表しました。当時、キリスト教民主党の党首だったヨーラン・ヘグルンド党首は、資産税を廃止して安い地方税に切り換える同党の案に、連合内の他政党を同意させたと発表し「このことが選挙の勝敗を決めるかもしれない」と、自信たっぷりに語っていました。
資産税の廃止を見越して、政府は住宅の課税価格を凍結し、集合住宅の税率を0.5パーセントから0.4パーセントに引き下げ、さらに宅地への課税額に5000クローナ(約8万8000円)の上限を設けました。また、政府は住宅協会への通常課税も廃止しています。
現在、一戸建て住宅や集合住宅に対する資産税から国庫へは年間160億クローナ(約2800億円)、商業ビルからの税金としては90億クローナ(約1600億円)が納められています。なお、今回廃止が合意されたのは、住宅の資産税のみです。
スウェーデンの資産税は個人が起業する際の障壁となり、他の欧州諸国よりも起業家の活動が活発でない原因になっていると非難されてきました。スウェーデンは人口に対する起業家の割合において、EU加盟27カ国中 18位となっています。資産税の廃止により、資産の海外への流出に歯止めをかけ、ベンチャーキャピタルやスタートアップ段階の企業への投資家に、より多くのリソースを提供できるようになることが期待されています。
財務大臣のアンデシュ・ボリィ氏は、資産税廃止の狙いは起業活動の支援による雇用の創出にあるとし、将来的には所得税の削減も検討していると語っています。
出典:The Financial Times, TT/The Local
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